TC研究会 理学療法士の梅澤拓未です。
中国へ旅立ち約半年が過ぎました。
だいぶ生活には慣れました。
というより、むしろ日本より私は過ごしやすいかと感じています。
理由をいくつかあげますと、仕事面ではとにかくやりがいがあるということです!
中国は日本の約25倍の面積ですが、その中国全土(実際は全土とまではいっていませんがかなり遠方から来て下さる方も多いです)からわざわざリハビリを受けに来て下さいます。
その上、50分の料金は日本円に換算すると1万円以上の料金を払って頂いています。
料金のシステムについては追々お話しさせて頂ければと思いますが、基本的には4週間(週6回)で1日50分を2回(上肢と下肢)のリハビリを受けて頂いているので、患者様はリハビリ代として4週間で約50万円は負担しているということになります。
この責任は大変重いですし、結果を求められる環境です!
それが私にとってはやりがいがあり良いと感じています。
但し、実際には結果を出せずに患者様や会社に迷惑をかけていることもあります!
患者様に満足して頂けないわけですから料金も頂けず、ただ働きというわけです。
自分一人分ならまだしも営業や通訳の方も無駄働きにしてしまいますし、会社の名も汚すわけですから責任は重大です。そんな訳でまだまだまだ学ぶことが多くあります!
また、生活面では中国人の方はあまり周囲を気にしすぎないおおらかな性格な方が多い様に思います。私は日本では重要な“空気をよむ”ことが得意ではないので、中国にいると自然体でいられることが多いです。色々なことへの過剰な気遣いは必要ない感じです。
そして食も私には合いますし、とにかく物価が安いので、単純に生活がしやすいです。
私の中国での生活はここまでにして、現在の中国の脳卒中患者についてお話しさせて頂きます。
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日本の脳卒中患者数は数年前の調査になりますが29万人で、中国はといいますと200万人で約7倍となります。
その上、日本の様に医療制度は確立されていませんし、介護保険制度はもっての他です。
日本では脳卒中になったら病院に行き必要であれば必ずリハビリをするという形が近年の流れです。そして、必要であれば退院前から介護保険の申請をして、在宅でも介護やリハビリを受けることができるシステムになっています。
一方中国では、お金がなければ医療は受けられないですし、戸籍(生まれた時の場所などが決定因子になっている)によって行ける病院が異なってきます。
基本的には公的な補助は殆どなく、各家族でみていかなければならないというのが現状です。そんな理由もあり中国全体の医療やリハビリの質は遅れているというのが現状かと思われます。
何と言ってもそんな状況なので、我が社の社長も日本の川平法(促通反復療法)を受けに中国から日本に来たわけです。
本日はその川平法(促通反復療法)の歩行への考え方を述べていこうと思います。
皆さんは片麻痺の人の麻痺側への荷重についてどの様に考えていますか?
- 麻痺側に強く荷重をしていく
- 健側と同じくらい荷重がかけられるようにしていく
- 良い方の足に荷重をしっかりとかけられるようにしていく
- 麻痺側には全く荷重をかけない
結構 『麻痺側に体重をかけて』 と言っているセラピストがいると思います。
その結果患者さんはどの様な歩行になるでしょう!
麻痺側に荷重がかかりすぎると、対応することができず健側への重心移動がうまくできず、結果歩様の悪化、歩行速度の低下を招いてしまいます。
その為、川平法(促通反復療法)では③の良い方の足に荷重をしっかりとかけていくため 『よいほうの下肢でしっかり立って』 という声かけをしていきます※。
実際に現場で患者様をみていると麻痺側に荷重をかけすぎていることも問題ではありますが、そもそも健側でしっかりと立つことができている人がかなり少ないというのが実情ではないでしょうか。
健側でしっかりと立つことができていない状態で、麻痺側に荷重をかけることを促していけば結果どの様になってしまうかはわかりますよね。
両側ともうまく使えない状態になってしまいますよね。
簡便なテスト方法として “健側のみで少し高い台の上で立ってもらうこと” をしても良いと思います。
麻痺側の足が下がってきてしまうようでは、トレンデレブ徴候の可能性が高く健側の中殿筋などがしっかりと作用していないことになります。
それではどの様に 健側で立つ練習をしていけば良いのか?
片足立ち? 起立訓練? バランスボード? お尻上げ? これらももちろん必要な時も多いでしょうし、それ以外もきりがないくらい練習方法があると思います!
実は川平法(促通反復療法)では、歩行中に徒手的に促通をしていきます!
中殿筋をタッピングしたり、骨盤の操作をしていきながら いい足でしっかりと立つことを促通していきます。スポーツをしている方はわかりやすいと思いますが、サッカーがうまくなりたい人が足の筋力だけつけてもうまくなりませんよね!
歩行も同様で、最終的には歩行の問題は歩行中に改善をしていくしかないということです!
結局この歩行中の促通が正確であれば何度も脳に良い信号が送られて、神経も筋も促通されていくわけです。
言い換えれば間違った歩き方をしていればずっと間違った神経回路が興奮し続けて強化していってしまうわけです。
脳卒中を発症したばかりの患者様をみることも難しいですが、何年も癖がついた歩行をしている人の歩行をかえていくことは更に難しいというのも頷けます。
川平法(促通反復療法)では歩行に限らず、間違った刺激を促通せず、必ず正確な刺激で促通をして脳に記憶させていくことが重要なわけです。
今回は歩行についてお話しさせてもらいましたが、もちろん歩行をする上で重要な個々の分離した運動などは、共同運動や痙縮の少ない臥位で促通をしていくことが必要なのは言うまでもありません。
中枢神経系は基本的に“やったことしか記憶しない”ので共同運動を分離して個々の運動をできるようにすることと、歩行のように複数の運動を組み合わせてできることは、区別して練習内容を考える必要はあるということです。
最後に会社の社長の記事が中国の地方新聞にのり、翻訳したものが川平ラボのHPに掲載されたので是非ご覧いただければ幸いです。
kawahira.org/informations/20180626101936/
本日もコラムをご覧いただき本当にありがとうございました。
※あくまでも考え方をわかりやすく説明させて頂いたため、本来は患者様のレベルや希望によって対応していくという事が最も重要なことだと考えます。
<引用文献>
川平 和美 下堂園 恵 野間 知一 : 片麻痺回復のための運動療法 促通反復療法「川平法」の理論と実際
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