【現場で使える整形外科的徒手検査法コラム①】〜学校で習うテスト法は意味がない!?〜

今回のコラムのポイント

・整形外科的徒手検査法とは何か?

・「陽性だと〇〇」「陰性だと〇〇」だけでは使い物にならない!?

・感度とは?特異度とは?

 

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このコラムは、学生、若手の治療家、トレーナーなどを対象に書いています。

 

ですが他にも、数字とかはどうも苦手で「統計学?ナニソレ」という方にも読んで欲しい内容です。

 

なぜなら、これから書く内容は、整形外科的徒手検査法にだけでなく、全てのコトに必要な考え方と知識だと感じているからです。

 

可能な限り、わかりやすく書いていくつもりですので、ご興味あれば是非お付き合いください。

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ある2人のスポーツトレーナーの会話を見てみましょう。

 

先輩

「さっき見てた、少し前に膝を捻ったって言う選手の評価はどうだった?」

 

後輩

「そうですね。関節内に少し腫脹がある感じがしたので、念のためラックマンテストとマックマレーテストをしてみたのですが、どちらも陰性だったので、ACLも半月板も大丈夫だと思うんですよね」

 

先輩

「う〜ん、本人の話を聞く限りだと、もう少し慎重に確認したいな。

特に、ラックマンテストは感度も高めのテスト法だから、陰性だったならとりあえずACL損傷の可能性は低いと考えても良いけど、マックマレーテストは、感度それほど高くないからね。」

 

後輩

「え?どういう事ですか?」

 

先輩

「マックマレーテストは、どちらかと言えば特異度が高いテスト法だから、陰性だからって半月板損傷が無いって考えるのは早計かも、ってこと」

 

後輩

「????」

 

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如何でしょうか?

 

この先輩トレーナが話している話の内容を

 

「うんうん、そだよな」

 

と、わかる人は、このコラムはとりわけ面白いものでは無いかもしれません。

 

ですが、この後輩トレーナーと同じく「????」という人にとっては、是非読んで欲しいです。

 

今回のコラムでは、この先輩トレーナーが言っている用語がわかるようになるコトが目標です。

 

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【整形外科的徒手検査法(以下:テスト法)とは何か?】

 

まずは、整形外科的徒手検査法とは何かを考えてみましょう。

 

整形外科的徒手検査法とは、

 

「主に整形外科分野で、徒手にて特定の組織に負荷をかける事により、診断の補助として使われる検査法」

 

の事です。

 

怪我の特定のために使われることもあることから、スペシャルテストとか、単に徒手検査と呼ばれることもあります。

 

定義として明確になっていない部分も多く、可動域検査、神経学的検査を含める場合もあれば、それとは明確に分ける場合もあります。

 

ですが、臨床や現場においては、この分類に大きな意味はありません。

 

あくまで、他の評価方法と上手く併用し、障害の特定や重症度の判定をする為のツールの1つです。

 

例えば『向原圭「医療面接」文光堂』では、

 

「きちんと病歴を聞けば86%の診断がつき、そこに身体所見を行うと6%情報が増し…」

 

などと書かれています。

 

つまり、問診、視診、触診などの他の所見があり、その上で整形外科的徒手検査法を行うことが大切だということです。

 

整形外科的徒手検査法は、整形外科で扱う疾患の多くに遭遇するコトが多い、柔道整復師、鍼灸師、スポーツトレーナーも「評価」の一環として活用するコトが多く、ただ単に教科書上の知識だけにしないコトが重要です。

 

これからは、大いに私的な見解も含めながらですが、この整形外科的徒手検査法を臨床や現場でどのように活用すれば、より有用なものになるのかの、個人的な考えを記していきたいと思います。

 

※以下、整形外科的徒手検査法を単にテスト法、徒手検査、またはスペシャルテストと記載します。

 

 

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【「陽性だと〇〇」「陰性だと〇〇」だけでは使い物にならない!?】

 

このコラムを読んで頂いている方は、どのような方が多いでしょうか。

 

理学療法士さん、柔道整復師さん、鍼灸師さん、スポーツトレーナーさん等でしょうか。

 

もしくは、今まさにそれを目指している学生の方でしょうか。

 

それぞれ、カリキュラムは違うと思いますが、そのカリキュラムのどこかでこの徒手検査法というものが出てくると思います。

 

私自身は、柔整、鍼灸、あマ指、ATのカリキュラムに関わったことしかなく、理学療法士さんの養成課程の内情は詳しくはわかりません。

 

ですが、養成課程で使用している教科書はよく目させて頂くので、徒手検査を扱っているカリキュラムもあるのだと思います。

 

 

それらの教科書の中では、大体、

 

 

 

「◯◯テスト」

→股関節を、写真のように動かして、痛みがあれば陽性。

※陽性の場合は「※※障害」を疑うコトができる。

 

 

と、いうように記載されていると思います。

 

1つ例をあげるのであれば、とても有名な「SLRテスト」。

 

これは、柔道整復師の教科書では

 

このように記されています。

 

 

 

 

 

 

このテスト法を、患者、選手、クライアントに使ったことはありますか?

 

そのとき、こんな疑問を持ったことはありませんか?

 

「あれ?SLRテストが陽性の場合は、ヘルニアのはずなのに、この人本当に腰椎椎間板ヘルニアかなぁ?」

 

 

そして、少し経験を積んでくると、こんな風に思いはしませんでしたか?

 

「徒手検査は、あまり当てにならないものもあるから、自分の経験で判断していくコトが大事だ」

 

 

また、私自身は、まだ新人だった頃に先輩にこう言われたことがあります。

 

「SLR testは、陽性になりやすいテスト法だから、これだけを信じてヘルニアと判断してはダメだ」

 

如何でしょうか?

 

同じような事を思ったり、言われた事がある方もいると思います。

 

 

さて、

 

これらは、半分正解ですが、半分は間違いです。

 

徒手検査法の中には、確かに、あまり当てにならないものも存在しています。

 

そして、自分の経験を積み重ねて、それを生かすことは、もちろん大切です。

 

ですが、徒手検査法を使いこなす時は、自分の経験だけでなく、ある事を知らなければいけません。

 

そして、そのある事は、何故か治療家、トレーナーの養成カリキュラムには登場してこないコトが殆どなのです。

 

 

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【感度とは?特異度とは?】

 

当時の私の先輩が言っていたように、テスト法の中には確かに

 

「陽性になりやすいもの」

 

があります。

 

また、その反対に

 

「陽性になりにくいもの」

 

も存在しています。

 

これは一体どういう事でしょうか?

 

この部分の理解こそが、数ある徒手検査法を、臨床や現場で使いこなす大きなポイントなのです。

 

 

 

 

徒手検査法を使う上で、絶対に知らなければいけないコト。

 

それは「信頼度」です。

 

 

身体所見やテスト法の信頼度は、主に

 

「感度」

「特異度」

と、いう言葉で表されてます。

 

感度は「実際に異常がある患者を検知する検査の能力を示す」用語です。

 

特異度は「実際には異常がない患者を感知する検査能力を示す」用語です。

 

 

これだけでは、難しいですよね。

 

一度で理解するのは、非常に大変だと思います。

 

今回はここまでです。

 

ですので、まず、コレだけはしっかりと記憶して頂けると幸いです。

 

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 整形外科徒手検査法は、診断の為の補助ツールであり、病歴で推測し、それに補足を加えるものである。

 徒手検査法には「陽性になりやすいもの」「なりにくいもの」が存在する。

 徒手検査法は信頼度という言葉で、その有用性が判断できる。

 信頼度には、主に感度と特異度というものがある。

以上です。
→次回は、この「感度と特異度」を、可能な限りわかりやすくご説明します!!
では、失礼します。

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参考書籍・小出良子 山口功「病歴を聞くと治療がわかる」医道の日本社 2009年 https://amzn.to/2NyHBYx
・向原圭「医療面接」文光堂 2006年 https://amzn.to/2PoOlZA
・JoshuaCleland「エビデンスに基づく整形外科徒手検査法」エルゼビア・ジャパン 2007年 https://amzn.to/2oqPtQX
・社団法人全国柔道整復学校協会「柔道整復学 理論編 改訂第4版」南江堂 2003年 https://amzn.to/2C562vy

 

コラム作成者プロフィール

 

 

 

 

 

内田 誠彦(うちだ なるひこ)
NSCA-CPT 鍼灸師・柔道整復師
千葉県内高校女子バレーボール部トレーナー
千葉県内高校サッカー部トレーナー
職歴
有限会社「ケッズグループ」
二和向台整形外科
和田整形外科
現職
葦-yoshi-代表

Facebookで約3万人のフォロワーを集める「スポーツ障害を動画で学ぶコミュニティー」の創設者

 

 

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